オンライン会議の画面や、矯正後の記念写真を見返したときに「歯と歯の間、歯ぐき寄りが黒く抜けて見える…」とヒヤッとしたことはありませんか。
その“黒いすき間”は、矯正後に一定数起こり得る ブラックトライアングル(=歯間乳頭が満たされず、歯ぐき側に三角のすき間ができた状態) です。
結論から言うと、矯正でブラックトライアングルになることはあります。
ただし「なるかどうか」は運ではなく、歯の形・歯ぐきと骨の高さ・歯周病の有無・年齢・動かし方など、理由がはっきりあります。
この記事ではブラックトライアングルについて気になることを一通り解説していますので、ぜひ最後までお読みください。
KEIKO/ 歯科衛生士
歯科衛生士。子育て真っ最中。趣味はガーデニングと読書。最近下の子が覚えた言葉は「バイバイ」。都内の歯科医院でのクリーニング・着色除去の現場経験をもとに、ホワイトニングなどの歯に関する知識についてをやさしく解説します。
ブラックトライアングルは「矯正の失敗」ではない

ブラックトライアングルは、矯正で歯列が整って“本来の歯の形や歯ぐきの条件”が見えやすくなった結果、表に出てくることがあります。
とくに、歯並びがガタガタだった人ほど、歯が並ぶ過程で 歯と歯の接触位置が変わるため、歯ぐき側にすき間が出やすくなります(=見た目だけでなく、フロスがスカスカに通る感じがすることも)。
ここでポイントになるのが、矯正で変わるのは「歯の位置」と「噛み合わせ」であって、歯の形そのものが自然に丸くなるわけではないという点です。
たとえば、歯が三角形に近い形(歯ぐき側が細い)だと、歯がきれいに整列したときに接触点が上に寄りやすく、歯ぐき側の“余白”が残りやすいことがあります。
さらに、ブラックトライアングルが「突然できた」と感じる背景には、見え方の変化も関係します。
つまり「矯正が悪かった」ではなく、矯正で整えたからこそ、構造が正直に見えるようになったと捉えるほうが実態に合います。
ブラックトライアングになりやすい人の特徴(セルフチェック)

次の項目が多いほど、ブラックトライアングルが出やすい傾向があります。
- 歯の形が三角形っぽい(先端が広く、歯ぐき側が細い)
→ そもそも歯ぐき側の幅が細いほど、歯が並んだときに“埋まる面積”が足りず、すき間が出やすくなります。 - 歯と歯の間の骨が低い/歯ぐきが下がりやすい体質
→ 歯ぐきの見た目は、骨の支えが大きく関係します。骨が低いほど、歯間乳頭が届きにくくなります。 - 歯周病(歯ぐきの炎症・骨吸収)の既往がある
→ 炎症が続いた部位は、矯正の刺激や清掃不良が重なると下がりやすく、ブラックトライアングルが“結果として目立つ”ことがあります。 - 年齢が上がるほど(歯間乳頭がボリュームダウンしやすい)
→ 年齢による変化として、歯ぐきが薄くなったり、形態が変わったりすることがあります。 - 下の前歯のガタつきが強かった
→ もともと最もガタつきが強いゾーンは、歯根の向きの調整が難しく、歯間の形が変わりやすい傾向があります。 - 歯と歯の根っこが開きやすい動き(根の角度)になっている
→ 見た目が揃っていても、根が開くと接触点が上がりやすく、歯ぐき側の“黒い余白”が残りやすいです。
※実際、矯正(特にアライナー矯正)の症例を分析した研究でも、年齢や歯列の状態などがブラックトライアングルの発生に関わることが報告されています。
「私は当てはまるかも…」と感じた方ほど、次の章の“構造”の話を押さえると安心です。ブラックトライアングルは、原因が見えると、対策の優先順位も見えてきます。
ブラックトライアングルはなぜ起きる?原因を「構造」で理解すると対策が早い

ブラックトライアングルは、ざっくり言うと次の関係で説明できます。
- 歯と歯の接触点が“上(歯の先端寄り)”にある
- 歯ぐきの土台(歯槽骨)の高さが相対的に“下がっている”
- その結果、歯ぐき(歯間乳頭)が届かず、すき間が黒く見える
ここで混同されやすいのが、「接触点(点)」と「接触面(面)」の違いです。現実には歯と歯は“点”ではなく、ある程度の“面”で接するように設計されますが、歯の形が三角形寄りだと、接触が上に寄りやすく、歯ぐき側にスペースが残りやすくなります。
さらに、歯ぐき(歯間乳頭)は“気合いで伸びるもの”ではありません。歯ぐきは骨の支えを受けて形が保たれるため、骨の高さが低いほど、歯間乳頭が満たされる確率は下がりやすいというロジックになります。
加えて、矯正特有の要因として次も押さえておくと判断が早いです。
- 歯根の向き(ルートパラレル)が整っていない:根が開くほど接触点が上がり、歯ぐき側が空きやすい
- 歯の傾斜(トルク)や捻転の残り:見た目が揃っていても歯の面の向きで影が出やすい
- 炎症による一時的な歯ぐきの変化:腫れていた歯ぐきが治る過程で“下がったように見える”ことがある
つまり原因は「矯正の良し悪し」ではなく、歯の形(幅)×骨の高さ×動かし方(根の向き)×歯周コンディションの掛け算です。ここを分解して見れば、対策は“運任せ”ではなくなります。
ブラックトライアングルは予防できる?矯正前〜矯正中にできること

ブラックトライアングルは「完全にゼロにする」と言い切れない一方で、“出にくくする設計”はできます。
ここでは、矯正を始める前から矯正中にかけて、現実的に効く順番で整理します。
1) 歯周状態の評価を先にやる(これが最重要)
歯ぐきが炎症を起こしていると、矯正中に歯ぐきが下がったり、骨が下がったりして、すき間が出やすくなります。
まずは 歯周検査・レントゲンで土台を把握し、必要なら歯周治療(クリーニング含む)を優先します。
ここでの“評価”は、単に「歯石を取る」だけではありません。
- 歯周ポケットの深さ(どこが炎症を起こしやすいか)
- 出血の有無(磨けていない場所の特定)
- 骨の高さ(ブラックトライアングルの出やすさの土台)
- 歯ぐきのタイプ(薄い・厚い)
この情報があると「矯正でできること」「矯正だけでは限界があること」を、最初から現実的に見積もれます。
また、矯正中は装置の影響で清掃難易度が上がりやすいです。炎症を起こさないために、歯科側のクリーニング頻度やホームケアの指示(フロスの種類、歯間ブラシのサイズ等)まで含めて、最初に“運用”を作っておくのがおすすめです。
2) 歯の形に合わせて「接触点を下げる」工夫をする
歯が三角形っぽい人は、歯ぐき側が細いのでどうしてもすき間が出やすいです。
この場合、矯正計画の中で IPR(歯と歯の間をわずかに整える処置) などを検討し、接触点を下げて“埋まりやすい形”に寄せることがあります(適応と安全域の見極めが必要)。
IPRは、正しく使えばとても合理的な手段ですが、自己判断で語れるものではありません。理由はシンプルで、削れるのはエナメル質の範囲であり、量と部位の設計が必要だからです。
- どの歯間に、どれくらい、いつ行うか(タイミングも重要)
- ブラックトライアングル対策としての目的(接触点を下げる)
- 歯並びや噛み合わせへの影響(スペースの使い方)
この3点がセットで説明できる先生だと安心材料になります。
3) 仕上げの「根の角度(ルートパラレル)」を丁寧に整える
見た目が揃っていても、根の向きが開いていると接触点が上がりやすく、ブラックトライアングルが残りやすいです。最終盤の微調整が効きます。
矯正では「歯冠(見える部分)」だけでなく、「歯根(骨の中の部分)」の向きもゴールに含める必要があります。特に前歯は、ほんの少しの角度差で、歯ぐき側のすき間の見え方が変わります。
また、仕上げで慌てないために、矯正中のどの段階でチェックするかも大切です。ブラックトライアングルが気になりやすい方ほど、途中経過の時点で「最終的にどう仕上げるか」を共有しておくと、選択肢が残ります。
「ブラックトライアングルが怖い」と感じた時点で、矯正の“仕上げ設計”に入る前に相談してください。
なぜなら、ブラックトライアングルは最後の最後で気づくほど選択肢が減りやすく、早めに共有しておくと「IPRを入れるか」「仕上げの動かし方を変えるか」など、矯正の範囲でできる工夫を残せるからです。
ブラックトライアングルになってしまった時の治し方

ブラックトライアングルの改善は、矯正だけで寄せる方法と、修復(ボンディング等)で埋める方法、そして 歯周・審美のアプローチの組み合わせです。
ただし、歯間乳頭の回復は簡単ではなく、治療選択は慎重に行うべき、という論点もレビューで繰り返し指摘されています。
ここで大事なのは、「治し方」を一気に決めないことです。ブラックトライアングルには、ざっくり次の2タイプがあり、タイプで優先順位が変わります。
- 歯の形・接触点の位置が主因:歯の形態調整(IPR)や修復(ボンディング)が理屈に合う
- 骨の高さ・歯ぐき条件が主因:矯正だけでの限界が出やすく、審美の落としどころ設計が必要
“原因がどちら寄りか”を歯科側が説明できると、遠回りしにくくなります。
| 方法 | できること | 向いているケース | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 矯正での微調整(歯の寄せ方/根の角度調整) | すき間を目立ちにくくする | 軽度〜中等度、仕上げ段階で調整余地あり | “ゼロ”にならないこともある |
| IPR(歯間の形態調整) | 接触点を下げて埋まりやすくする | 歯が三角形寄りで、歯ぐき側が細い | 適応・量・エナメル質への配慮が必須 |
| ダイレクトボンディング(樹脂で足す) | 形を足して見た目を整える | 早く見た目を整えたい、軽度〜中等度 | 色・欠け・メンテが必要なことも |
| ラミネートベニア/クラウン | 形と色を大きく設計できる | 見た目を大きく変えたい | 侵襲が大きくなりやすい/費用 |
| 歯周の審美治療(外科/フィラー等) | 歯ぐき側の見た目にアプローチ | 歯ぐきの条件が強く影響している | エビデンスや適応は要検討 |
ブラックトライアングルについてよくある質問(FAQ)

Q1. ブラックトライアングルって、自然に埋まりますか?
歯ぐきの炎症が原因で一時的に下がっていた場合は、炎症改善で見た目が落ち着くことはあります。矯正中に磨きにくい部位が出血しやすくなり、そこから歯ぐきが不安定になることもあるため、まずは炎症があるかどうかを確認するのが近道です。
ただし、骨の高さや歯の形が主因の場合は“自然に完全に埋まる”は期待しすぎない方が安全です。期待値を上げすぎると、必要以上に攻めた処置を選びたくなってしまうので、「改善の余地はあるが、ゼロを保証できるものではない」と理解しておくと落ち着いて判断できます。
Q2. 矯正医にどう伝えればいい?
「ブラックトライアングルが気になる」だけでOKです。加えて、次をセットで伝えると診断が早いです。
- いつ気づいたか(矯正中/矯正後/保定中)
- どの歯か(上前歯/下前歯/犬歯付近など)
- フロスの通り方(スカスカ/引っかかる)
- 食べ物が詰まるか、出血があるか
- 写真で目立つか(真正面/斜めなど)
可能なら、スマホで「気になる角度の写真」を1枚撮って見せるのも有効です。言葉だけよりも、先生が“影の出方”まで含めて判断しやすくなります。
Q3. ボンディングはすぐできますか?
可能なことも多いですが、矯正の仕上げや保定の安定を見てからが基本です。噛み合わせや後戻りのリスクも含め、順番を相談してください。
特に注意したいのは、矯正直後は歯の位置がまだ落ち着ききっていないことがある点です。ここで先に形を足すと、あとで微調整が必要になったときにやり直しが出ることもあります。
「いつやるのがベストか」は、保定の計画(リテーナー)ともセットで確認するとスムーズです。
Q4. 歯周病があると、矯正は危ない?
ケースによりますが、歯周病がある場合は 歯周治療で炎症を落ち着かせてから矯正を進めるのが一般的です。歯の土台が不安定なまま動かすと、見た目の問題も起きやすくなります。
「危ないかどうか」を一言で決めるよりも、どの歯がどれくらい影響を受けているかを把握し、炎症コントロールをしながら進められる設計になっているかが重要です。
歯周病の既往がある方ほど、矯正中のクリーニングやセルフケアのサポート体制(指導・定期管理)が結果に直結します。
ブラックトライアングルは「理由がある」。だから対策も選べる

- 矯正でブラックトライアングルになることはある
- 主因は 接触点・骨の高さ・歯の形 の組み合わせ
- 予防と改善は、矯正調整・IPR・ボンディング等を“順番”込みで設計するのが近道
- 迷ったら、矯正医に「仕上げでブラックトライアングルをどう扱うか」を早めに共有する
「せっかく矯正したのに…」と落ち込む必要はありません。
ブラックトライアングルは、きちんと構造を見れば、現実的な落としどころを作れます。大切なのは、見た目の黒さだけを見て焦るのではなく、原因が“歯の形”寄りなのか、“骨と歯ぐき”寄りなのか、“動かし方(根の向き)”寄りなのかを分解して、順番に手を打つこと。
そしてもう一つ。ブラックトライアングルが気になる方ほど、矯正のゴールを「歯がまっすぐ」だけで終わらせず、清掃性(詰まりにくさ)まで含めてゴール設計すると満足度が上がります。見た目と機能はつながっています。
気になるすき間があるときは、遠慮せず「ブラックトライアングルが心配です」と伝えてください。早めに共有するほど、矯正の範囲でできる工夫が残りやすく、結果として“治し方”の選択肢も増えます。
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