クリニックのカウンセリングルームで提示された、90万円(税込)という見積書。その金額を見て、一瞬息が止まりそうになりませんでしたか?
「自分の貯金で本当に払えるのかな…」と、帰りの電車で不安になった方もいると思います。
家に帰ってベッドの上でスマホ検索しても、出てくるのは「年収600万円の例」や、難しい税金用語ばかり。だからこそ、「結局、年収400万円の私の場合はどうなるの?」というモヤモヤが消えないんですよね。
でも、安心してください。結論からお伝えすると、年収400万円のあなたが90万円の矯正治療を行った場合、トータルで約12万円が“負担を軽くしてくれる”イメージになります。つまり、実質の治療費は約78万円まで下がる計算です。
ただし、ここには一つ大きな「落とし穴」があります。ネットによくある「20万円戻る!」といった甘い言葉をそのまま信じていると、来年の春に「あれ?振込額が少ない…」とガッカリすることになりかねません。
なぜなら、お金が戻ってくるルートは「現金」だけではないからです。
「現金還付」のリアルな数字と、多くの人が見落としがちな「住民税」による本当の恩恵について、包み隠さず解説します。
KEIKO/ 歯科衛生士
歯科衛生士。都内の歯科医院でのクリーニング・着色除去の現場経験をもとに、ホワイトニングや歯列矯正などの歯に関する知識についてをやさしく解説します。子育て真っ最中。趣味はガーデニングと読書。最近下の子が覚えた言葉は「バイバイ」。
【結論】年収400万・治療費90万なら「合計12万円」お得です

まずは、あなたが一番知りたい「結局いくら得するのか」という結論から見ていきましょう。
年収400万円(独身・扶養なし)の会社員が、年間90万円の矯正費用を支払った場合、合計で約12万円の節税効果が見込めます。
計算式は少し複雑ですが、結果はシンプルです。
- 支払った治療費: 900,000円
- 戻ってくるお金(節税額): 約120,000円
- 実質の自己負担額: 約780,000円
いかがでしょうか。「12万円引き」と考えると、少し気持ちが楽になりませんか?この12万円は、確定申告という「ひと手間」をかけることで、制度として正当に受け取れるメリットです。
まず押さえる前提:「年収400万=税率5%」は“課税所得”で決まります
ここで、検索上位の記事で一番つまずきやすいポイントを先に整理しておきます。
ネット上には「所得金額400万円だから税率20%」のように書かれているシミュレーションもありますが、これは“年収(給与収入)”と“課税される所得金額”を混同しているケースが混ざりがちです。([we-smile.jp][1])
所得税率は「年収」ではなく、給与所得控除や各種控除を差し引いたあとの課税される所得金額で決まります。([国税庁][2])
【3ステップ】あなたの“12万円”はこうやって出ています
医療費控除は、ざっくり言うと「課税対象の所得を減らす制度」です。
このため、戻り方は「所得税(現金還付)」+「住民税(翌年の減税)」の2階建てになります。
Step1:医療費控除の対象額
(支払った医療費 − 保険金などの補填 − 10万円)
※所得が200万円未満の人は「10万円」の代わりに「所得の5%」が基準になります。
Step2:所得税の還付(現金)
医療費控除の対象額 × あなたの所得税率(例:5%)
さらに、復興特別所得税(所得税額×2.1%)も連動します。
Step3:住民税の減税(翌年)
医療費控除の対象額 × 10%(所得割)
※均等割などは別枠です。
【今回の数字】90万円なら「控除対象80万円」が基準になります
保険金などの補填がない前提で、控除対象額はこうなります。
- 控除対象額:900,000円 − 100,000円 = 800,000円
- 所得税(5%):800,000円 × 5% = 40,000円(+復興特別所得税ぶんが少し上乗せ)
- 住民税(10%):800,000円 × 10% = 80,000円
だから、合計でおよそ120,000円前後が現実的な着地になります(※控除状況によって数千円〜数万円は前後します)。
【ケース別】年収400万円でも「戻る額」がズレる3パターン
「年収400万円」でも、実は戻り方がブレます。ここを押さえておくと、あとでガッカリしにくくなります。
パターン1:同一生計の家族の医療費を合算できる(=控除対象が増える)
医療費控除は、あなた本人だけでなく同一生計(家計が一緒)の家族分も合算できます。
矯正以外に、家族の通院・処方薬・検査費が多い年は、控除対象額が増えて戻りも増えます。
パターン2:保険金・給付金が出た(=控除対象が減る)
生命保険の給付金や健康保険の高額療養費など、医療費を補填するお金があると、その分は差し引きになります。
「矯正は自由診療だから関係ない」と思いがちですが、同年に別の治療で給付を受けていると影響することがあります。
パターン3:あなたの“所得税率”が5%じゃない(=現金還付が変わる)
所得税率は課税所得で決まります。
副業収入がある、扶養控除や保険料控除が大きく変動した、などで課税所得が動くと、現金還付(所得税部分)が増減します。
✍️ 迷ったらここだけ確認
源泉徴収票の「給与所得控除後の金額」→ そこから各種控除を引いた「課税される所得金額」で税率が決まります。給与所得控除の考え方自体は国税庁の表(計算式)に沿います。
ガッカリしないで!還付金が少ない本当の理由
「えっ、12万円も戻ってくるの?」そう思ったあなたに、少しだけ冷静なお話をさせてください。
実は、春先にあなたの銀行口座に「現金」として振り込まれるのは、12万円のうちの約40,000円前後です。
「残りの8万円はどこへ?」と思いますよね。ここで重要になるのが、「所得税還付金(現金)」と「所得税率」の関係です。
なぜネットのシミュレーションと違うのか?
インターネット上の「20万円戻る!」といった例は、多くは年収600万円以上の高所得者(税率20%〜)向けの設定です。所得税率は「課税される所得金額」によって5%〜45%で段階的に上がります。
年収400万円の方は、控除後の課税所得が低いレンジに収まりやすく、所得税率が5%になるケースが多いため、現金還付額も比例して抑えられます。
よくある“誤解の元”:「20〜30%戻る」という表現に注意
矯正歯科サイト等で「治療費の20〜30%が戻る」といった説明を見かけることがありますが、実際は税率と控除対象額で決まるため、全員がその割合で戻るわけではありません。
3月〜4月の振込額が予想より少なくても、決して手続きの失敗ではありません。
理由: 住民税の減税効果は見落とされがちで、あなたのメリットの残り7割(約8万円)はそちらで還元されているからです。
【重要】本当の恩恵は6月に来る!見落としがちな「住民税」の話
所得税の税率は年収で変わりますが、住民税の税率は誰でも一律で「10%」(所得割)と考えるのが基本です。
- 所得税還付(5%): 約40,000円
- 住民税減税(10%): 約80,000円
年収400万円の方にとっては、現金還付よりも住民税減税の方が、金額的なメリットが大きくなりやすいのです。
「手取りが増える」という隠れたボーナス
この8万円は、確定申告をした年の6月から翌年5月まで、毎月の給料から引かれる住民税が安くなる形で戻ってきます。
月々に換算すると、約6,600円。毎月のスマホ代が浮くくらいの感覚です。
確認ポイント:住民税は「住民税決定通知書」で見えます
会社員(特別徴収)の場合、毎年5〜6月頃に会社から配られる「住民税決定通知書」に、翌年度の住民税が載ります。
医療費控除の影響は、この「所得割」側に反映されます(均等割や森林環境税などは別枠)。
大人の矯正は対象外?申請を通すための「診断書」の重み
「審美目的(美しさのみ)」はNGですが、「機能改善(噛み合わせなどを治す)」は対象になります。
歯列矯正を受ける人の年齢や矯正の目的などからみて歯列矯正が必要と認められる場合の費用は、医療費控除の対象になります。
出典: 国税庁 No.1128
“大人矯正”で一番安全な言い方(カウンセリングでの確認フレーズ)
カウンセリング時に医師へ、「医療費控除を申請したいので、医学的に治療が必要という診断になりますか?」と確認し、必要なら診断書をもらっておくと安心です。
診断書があると強いケース
- 噛み合わせ(不正咬合)による咀嚼のしづらさ
- 顎関節への負担が疑われる
- 歯並びが原因で清掃性が落ち、虫歯・歯周病リスクが高い
※最終判断は「治療目的として必要かどうか」の合理性が大切です。国税庁の考え方(No.1128)を踏まえると、ここを言葉にできるだけで通りやすさが変わります。
デンタルローンはいつ申告?よくある3つの勘違い
1.申告するのは「支払った年」か「立替払いが起きた年」かで分かれる
ここが最重要です。
歯科が信販会社に立替請求し、あなたは信販会社へ返す(典型的なデンタルローン)タイプは「立替が確定した年に全額を医療費にできる」整理になることが多い
・医院への分割払い(医院へ年をまたいで支払う)タイプは「その年に実際に支払った分だけ」になります。年をまたぐ分割の考え方は“支払った年ごと”が原則
2.金利・手数料は対象外: 控除対象は治療費そのもの(治療の対価)だけです。
3.通院の交通費も対象: 電車やバスの運賃もメモしておけば医療費に加えられます(ガソリン代や駐車場代は対象外になりやすいので注意)。
クレジットカード払いの落とし穴:「引き落とし日」ではなく「決済日」
カード払いは、通帳から落ちた日ではなく、医院で決済した日(支払が成立した日)を基準に考えます。ここを間違えると、年をまたいで申告年分がズレてしまいます。
よくある質問(Q&A)
Q1. いつ確定申告するの?(2026年ならいつ?)
たとえば2025年(令和7年)に支払った医療費は、原則として2026年2月〜3月頃の確定申告で医療費控除を申請します(還付申告は期限の考え方が別になることもあります)。
手続の具体は国税庁の案内(医療費控除の手続)に沿うのが安全です。
Q2. 領収書って提出するの?なくしたら終わり?
今は原則、「医療費控除の明細書」を提出し、領収書は提出不要です。ただし、領収書は5年間の保存義務があります。
なくすと明細が作れないので、最低でも「医院名・日付・金額」が残る形で保管しましょう。
Q3. 住民税が下がったか、どうやって確かめる?
会社員なら、5〜6月配布の「住民税決定通知書」で確認します。医療費控除の影響は主に所得割(標準10%)側に反映されます。
Q4. “年収400万円”でも12万円にならないのはどんな時?
- 保険金・給付金で補填があった(控除対象が減る)
- 同年の医療費が少なく、10万円のハードルを超えない(対象額が小さい)
- あなたの課税所得が想定より高く/低く、所得税率が変わる(現金還付が増減)
確定申告は自分への「キャッシュバック手続き」です
90万円は大きな出費ですが、医療費控除を正しく使えば実質78万円になります。
最短で迷わないために、やることチェックリストは以下になります。
- まず保管:歯科医院の領収書/ローン契約書/(あれば)診断書
- 交通費メモ:通院日・区間・金額(電車・バス)
- 明細書を作る:「医療費控除の明細書」を作成して申告(領収書は提出せず、5年保存)
- 6月も確認:住民税決定通知書で“翌年の減税”まで反映されているか見る
- まずは、歯科医院でもらった領収書やローンの契約書をなくさないように、専用の箱を作って保管することから始めてください。その一歩が、12万円のメリットをきちんと受け取ることにつながります。
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