「日本人の歯の平均はA3」と断定できる十分な根拠は確認できません。
A3は、歯科で使われる代表的な色見本「VITA classical A1-D4」の中にある1つのシェードです。
天然歯の色は、
- 人による違い
- 年齢
- 前歯・犬歯など歯の種類
- 歯の先端・中央・根元などの部位
- 照明や乾燥状態
によって変わるため、A3より明るい・暗いだけで「平均以上」「黄ばんでいる」と判断することはできません。
自分の歯の色を正確に確認したい場合は、歯科医院でシェードガイドや測色機器などを使って確認してもらうのが分かりやすい方法です。
「日本人の歯の色はA3が平均って本当?」
「A3って黄色い方なの?」
「自分の歯は平均より黄ばんでいる?」
歯の色を調べると、「日本人の平均はA3」という説明を見かけることがあります。
しかし、日本人全体の天然歯の平均色をA3と決められる十分なデータは確認できません。
そもそも天然歯には非常に幅広い色があり、同じ人でも前歯と犬歯、歯の先端と根元では色が違って見えます。
この記事では、A3とはどんな色なのか、VITAシェードガイドの見方、自分の歯の色を確認するときの注意点まで分かりやすく解説します。
KEIKO / 歯科衛生士
歯科衛生士。歯科領域の公的情報・専門学会・研究論文などを確認しながら、ホワイトニングや歯列矯正について分かりやすく解説しています。
- 1 歯の色の平均は本当にA3?
- 2 A3とはどんな色?VITA classicalシェードガイドの見方
- 3 そもそも天然歯はなぜ真っ白ではない?
- 4 同じ1本の歯でも根元と先端では色が違う
- 5 前歯と犬歯でも色は同じではない
- 6 年齢によって歯の色は変わる?
- 7 A3より濃ければ「歯が黄ばんでいる」?
- 8 自分の歯がA3かセルフチェックできる?
- 9 歯科医院では歯の色をどう確認する?
- 10 オンライン会議や写真だけ歯が黄色く見えるのはなぜ?
- 11 A3からA1・B1にホワイトニングできる?
- 12 1本だけ色が違う場合は「平均」と比較しない
- 13 歯の色とA3についてよくある質問
- 14 まとめ|「日本人の平均=A3」ではなく、自分の歯の色を正しく確認しよう
- 15 参考情報
歯の色の平均は本当にA3?
結論として、
「日本人の天然歯の平均=A3」と一律に考えるのはおすすめできません。
海外ではA3が最も多かった集団を報告した研究があります。
しかし、その研究はスーダンの成人を対象としたもので、日本人の平均色を示す研究ではありません。
別の研究では、上顎の中切歯・側切歯ではA2が最も多く、犬歯ではB3が最も多かったという結果も報告されています。
つまり、
どの色が多いかは、対象となる集団・年齢・歯の種類などによって変わります。
天然歯の色は16色だけに分けられるものでもない
2024年に8,153本の未処置の前歯を測定した研究では、1,173種類の異なる天然歯色が識別されました。
さらに、代表的なVITA classicalやVITA 3D-MASTERでも、天然歯に存在する色の範囲を完全にはカバーできないことが示されています。
そのため、
「A1なら白い」
「A3なら平均」
「A4なら黄色すぎる」
というように、シェード番号だけで天然歯を単純にランク分けすることはできません。
A3とはどんな色?VITA classicalシェードガイドの見方

歯科医院では、歯の色を確認するときにシェードガイドという色見本を使用することがあります。
代表的なもののひとつが、
VITA classical A1-D4
です。
VITA公式では、シェードを次のような色調グループに整理しています。
| グループ | VITAによる色調分類 |
|---|---|
| A | 赤みを帯びた褐色系 |
| B | 赤みを帯びた黄色系 |
| C | グレー系 |
| D | 赤みを帯びたグレー系 |
A3は、このうちA系統に含まれる1つの色見本です。
A系統には、
- A1
- A2
- A3
- A3.5
- A4
があります。
A3=「黄色い歯」ではない
A3を見て、黄みを感じる人はいるでしょう。
しかし、
A3だから汚れている
A3だから不健康
という意味ではありません。
シェードガイドは歯の色を比較・記録するための色見本であり、虫歯・歯周病・口腔衛生状態を判定する健康スコアではありません。
そもそも天然歯はなぜ真っ白ではない?

天然歯は、白い材料だけでできているわけではありません。
歯の表面にはエナメル質があり、その内側には象牙質があります。
エナメル質には透明感があるため、歯の見た目には内側の象牙質の色も影響します。
そのため健康な天然歯でも、
- 黄み
- 赤み
- 透明感
- 部位による濃淡
があります。
天然歯がコピー用紙のような真っ白ではないこと自体は異常ではありません。
同じ1本の歯でも根元と先端では色が違う
歯の色を考えるときに重要なのが、
「1本の歯にも色差がある」
ということです。
天然の中切歯を測定した研究では、切端側から歯ぐきに近い歯頸部へ向かうにつれて、赤み・黄みが増える傾向が報告されています。
また透明感も部位によって異なります。
つまり、
「この歯はA3」と1色で表現しても、歯全体が均一なA3色というわけではありません。
根元が黄色く見えるのは珍しいことではない
前歯をよく見ると、
「先端は透明感があるのに根元は黄色い」
と感じることがあります。
天然歯の色・透明感には部位差があるため、それだけで「根元に汚れがたまっている」とは判断できません。
ただし、表面着色や歯石などが付着している場合もあるため、気になる場合は歯科医院で確認してもらいましょう。
前歯と犬歯でも色は同じではない
前歯全体を見たとき、
「犬歯だけ少し黄色い」
と感じる人もいます。
これも必ずしも異常ではありません。
研究では、同じ人の上顎中切歯と犬歯でもVITA Classicalのシェード系統が異なるケースが多いことが報告されています。
別の研究でも、中切歯・側切歯と犬歯では最も多いシェードが異なりました。
口の中のすべての歯が同じ白さで揃っていることが天然歯の正常像というわけではありません。
年齢によって歯の色は変わる?
変化する傾向があります。
13〜84歳の天然中切歯を測定した研究では、年齢が上がるにつれて、
- 明るさが低下する
- 黄みが増える
傾向が確認されています。
そのため、
20代と60代の歯に同じ「平均色」を当てはめることにも無理があります。
年齢だけで歯の色が決まるわけではありませんが、「日本人ならA3」という一つの基準だけで自分の色を評価しない方がよいでしょう。
A3より濃ければ「歯が黄ばんでいる」?
これも一概には言えません。
歯が暗く・黄色く見える理由には、大きく分けて、
- 天然歯そのものの色
- コーヒー・お茶・喫煙などによる表面着色
- 加齢による色調変化
- 形成期からの変色
- 1本だけ起きている変色
- 詰め物・被せ物の色
などがあります。
表面のステインならクリーニングで変わる場合がある
コーヒー・紅茶などによる外因性の着色であれば、歯科クリーニングなどによって本来の歯の色に近づけられる場合があります。
天然歯そのものを明るくしたいならホワイトニング
表面汚れではなく天然歯そのものの色を現在より明るくしたい場合は、歯科ホワイトニングが選択肢になります。
自分の歯がA3かセルフチェックできる?
正確に、
「私の歯はA3です」
と自宅だけで判定するのは難しいです。
歯の色は、
- 照明
- 周囲の色
- スマートフォンの自動補正
- ホワイトバランス
- 歯の乾燥
などによって見え方が変わります。
また、シェードガイドを使った目視判定自体にも観察者によるばらつきがあります。
コピー用紙との比較でA3かどうかは分からない
白いコピー用紙を歯の横へ置く方法は、歯の黄みを強く感じやすくなるため、
A3・A2など具体的なシェードを判断する方法としては適していません。
コピー用紙は天然歯より白いことが一般的で、対比によって歯が黄色く見えることがあります。
自宅では「色番号」より変化の記録に使う
自宅でチェックするなら、
- 同じ場所
- 同じ時間帯
- 同じ照明
- 同じカメラ
- 同じ撮影設定
で写真を残し、
「以前と比べて変化したか」
を見る用途の方が適しています。
歯科医院では歯の色をどう確認する?
歯科医院では、
- シェードガイドによる目視
- 写真撮影
- 分光測色計などの機器
を使って歯の色を確認する場合があります。
VITAもシェード選択では、通常の室内照明ではなく自然光または標準化された昼光環境で確認することを推奨しています。
周囲の鮮やかな色や口紅なども色の見え方へ影響するため、色を正確に確認するときは環境を整えます。
測色機器でも完全ではないが、客観的な記録に使える
2024年に2,768本の天然歯を比較した研究では、分光測色計による測定はシェードガイドによる目視より再現性が高いと報告されています。
一方、どの方法でも天然歯の複雑な色を完全に1つの番号へ置き換えられるわけではありません。
「A3かA2か」という番号そのものより、同じ方法で施術前後を比較することが重要です。
オンライン会議や写真だけ歯が黄色く見えるのはなぜ?
実際の鏡では気にならないのに、
「Web会議だと歯が黄色い」
「スマホ写真だけ暗く見える」
という場合は、撮影環境も確認してみましょう。
照明によって色の見え方は変わる
歯のシェード選択を調べた研究でも、光源が変わることで色の判定結果に有意な差が出ています。
特に、
- 暖色系の照明
- 暗い室内
- 顔の上からだけ当たる照明
- カメラの自動ホワイトバランス
などでは、実際とは違う色に映る可能性があります。
画面上で黄色く見えることだけを理由に「自分の歯は平均より黄色い」と判断しないようにしましょう。
A3からA1・B1にホワイトニングできる?
「今A3だからA1まで白くしたい」
という希望もあるでしょう。
ただし、ホワイトニング後にどのシェードまで明るくなるかには個人差があります。
- 施術前の色
- 変色の原因
- 使用する漂白材
- 施術方法
- 歯の状態
などによって結果が異なります。
そのため、
「A3なら○回で必ずA1になる」
とは言えません。
希望する色がある場合は、現在のシェードを確認してから歯科医師へ相談してください。
▶ オフィスとホームホワイトニングはどっちがいい?効果・痛み・料金を比較
1本だけ色が違う場合は「平均」と比較しない
前歯のうち、
1本だけ急に暗くなった
昔ぶつけた歯だけ色が違う
神経を取った歯だけ黒っぽい
という場合は、全体の平均色とは別の問題です。
外傷や歯髄の状態、修復物などが関係する場合があります。
一般的な歯磨きや全体のホワイトニングだけで判断せず、歯科医院で原因を確認してください。
歯の色とA3についてよくある質問
日本人の歯の平均はA3ですか?
日本人全体の平均色をA3と断定できる十分な根拠は確認できません。
A3が多かった海外研究はありますが、対象となる人種・年齢・歯の種類などによってシェード分布は異なります。
A3は黄色い歯ですか?
A3はVITA classicalのA系統に含まれる色見本のひとつです。
黄みを感じる場合はありますが、A3だから汚れた歯・不健康な歯という意味ではありません。
A3は普通の歯の色ですか?
天然歯として存在し得る色のひとつですが、「A3=普通」という医学的な基準ではありません。
天然歯の色には非常に大きな個人差があります。
A3よりA2の方が白いですか?
同じA系統の色見本でも見え方は異なります。
ただし、VITA classicalの番号を単純な「健康度」や「黄ばみ度」として使うものではありません。
B1が一番白い歯ですか?
VITA classicalにはB1という明るいシェードがありますが、天然歯やホワイトニング後の歯の色を単純に「一番白い=B1」とだけ評価できるわけではありません。
また、VITA classical自体が天然歯に存在するすべての色を網羅しているわけではありません。
自宅でA3か確認できますか?
スマートフォン写真やコピー用紙との比較だけで正確にA3と判断するのは難しいです。
具体的なシェードを知りたい場合は、歯科医院で確認してもらう方が適しています。
犬歯だけA3で前歯がA2でもおかしくないですか?
必ずしもおかしくありません。
天然歯は歯種によって色が異なることがあり、中切歯と犬歯で異なるシェードになることもあります。
年齢とともに歯は黄色くなりますか?
天然中切歯を調べた研究では、年齢とともに暗く・黄色みが増える傾向が報告されています。
ただし、すべての人が同じ変化をするわけではありません。
A3ならホワイトニングした方がいいですか?
A3というだけでホワイトニングが必要になるわけではありません。
現在の色に本人が満足しているなら、治療する必要はありません。
もっと明るくしたい場合に、歯の状態を確認したうえでホワイトニングを検討します。
まとめ|「日本人の平均=A3」ではなく、自分の歯の色を正しく確認しよう
歯の色とA3について重要なポイントをまとめます。
- 日本人の天然歯の平均をA3と断定できる十分な根拠は確認できない
- A3はVITA classicalシェードガイドの1色
- シェード番号は歯の健康状態を示すものではない
- 天然歯の色には非常に大きな個人差がある
- 同じ人でも前歯と犬歯で色が異なる場合がある
- 同じ1本でも先端・中央・根元で色や透明感が違う
- 加齢によって暗さ・黄みが増える傾向も報告されている
- 照明やカメラによって歯の見え方は変わる
- コピー用紙だけではA3かどうか判断できない
- 具体的なシェードを知りたい場合は歯科医院で確認する
「平均より黄色いか」を気にするより、今の色が表面着色なのか天然歯本来の色なのか、そして自分がその色をどう感じているかを確認する方が大切です。
表面着色が気になるならクリーニング、天然歯そのものを現在より明るくしたいならホワイトニングなど、原因と希望に合わせて方法を選びましょう。
参考情報
- VITA Zahnfabrik「VITA classical A1-D4 shade guide」
- How many tooth colors are there?
- Color and translucency of in vivo natural central incisors
- Spectrophotometric Evaluation of Anterior Maxillary Tooth Color Distribution According to Age and Gender
- Identifying the tooth shade in group of patients using Vita Easyshade
- In Vivo Color Relationships Between the Maxillary Central Incisors and Canines as a Function of Age
- Clinical Comparative Study of Shade Measurement Using Two Methods: Dental Guides and Spectrophotometry
- Effects of different light sources on tooth shade selection
- 一般社団法人 日本歯科審美学会「歯のホワイトニングについて」